サポチル NPO法人 子どもの心理療法支援会

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事務局からのお知らせです

【不開催となりました】子どもの精神分析的心理療法 連続セミナー2024

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本セミナーは当初予定していた参加者数を大幅に下回ることとなり、不開催を決定するに至りました。

例年は100名超の参加者があったものの、情勢の変化によるものとしてやむを得ず今回の決断に至りました。
今回のセミナーを楽しみにしていただいていた皆様に、心よりお詫び申し上げます。
なお、エッセイについては今後の企画にもつながるものとして引き続き公開いたします。


子どもの精神分析的心理療法セミナー2024は「精神分析的臨床家としてサバイブする」というテーマで、4月末まで参加者を募集しています。
詳細は下記、セミナー紹介ページもご覧ください。

連続セミナー2024

▼セミナー紹介ページ
https://sacp.jp/2024/02/05/2558/

▼申込フォーム
https://forms.gle/E8U2SupKqLzLJXVLA

「精神分析的臨床家としてサバイブする」というタイトルは、もしかすると敷居が高く感じられる人もいるかもしれません。「私は別に精神分析的臨床家では…」という人もおられるでしょう。実際には今回の企画含め、このセミナーはビギナーから中堅と、幅広い方に向けたものです。こうした観点から、セミナーの「前書き」に相当することを、少しご紹介がてら書いてみたいと思います。

訓練と臨床実践の幅

セミナーを始めた当初から、このセミナーは応用臨床を含めた幅広いものを志向してきました。オンラインでの開催という特性上、地域的にも、そして分析臨床との関わりにおいても、色んな人に来ていただきたい、分析的実践の面白さを知ってほしいというのがありました。
参加者の中には、長く分析的実践の勉強をされてきた方もおられるかもしれません。スーパーヴィジョンを受けたり、個人セラピーを受けた方もおられるでしょう。しかし、そうしたコアな訓練を受けていない人もたくさんおられるものと私は考えています。例えば、時々こうしたセミナーや文献講読に参加されている方もおられるかもしれません。はたまた、オンラインだったので、初めて分析的実践について触れることができた、という方もおられるかもしれません。地域によっては、分析的な臨床をされている方が、ほとんどいないところもあるかもしれません。
別の軸で、臨床実践の幅を考えてみましょう。個人・集団を対象にしたセラピーをされている方もおられれば、低頻度の実践をされている方もおられるでしょう。中には不定期のコンサルテーションや、検査の実施などが中心の方もおられれば、放課後等デイサービスでの子どもとの関わりをされている方もおられるかもしれません。心理療法というものは、人にとっては手が届きにくい、あるいは、自分の臨床と距離の離れたものと感じられているのかもしれません。

精神分析的実践とは何なのか?どう生き残っていくのか?

「精神分析的」と聞くと、人によってはそれを「週1回以上、45分か50分での面接」と捉える人もいるかもしれません。これは誤解だと言いたいところですが、半ば神秘化された、ある種の共通認識になってきたところもあるように思います。恥を忍んでここに書きますが、私も心のどこかで、できればセラピーをしたい、という願望を持っています。
しかし、分析的実践のメッカである英国でも、近年ではより広く応用臨床が行われているようです。例えば、多職種チームでのアセスメントの実践、子どもが親元で暮らすのが安全かどうか見極める際のアセスメント(裁判所での実践)、などが挙げられます(Horne & Lanyado, 2009)。この背景には、どうやら財政上の都合もあるようです。日本ほどではないかもしれませんが、どこの国でも、分析的実践がどう生き残っていくかは深刻な問題であるようです。
私はセラピーだけが精神分析的実践だ、という態度では、この実践は生き残っていけないだろうと危惧しています。かといって、セラピーがなくなっていいとも思いません。実際、サポチルが低額ないしは無料で提供しているセラピーを必要としている人は確かにいますし、確かな枠組の中でなければ人と関わることが難しい人がいるのは事実です。このバランスを考えていく必要があります。
有体に言えば、私がセミナーを企画する上で考えているのは、幅広い臨床をしている人の役にも立ってほしいし、セラピーの面白さも知ってほしい、ということです。

個人的な体験

このテーマとの関連で、少しだけ私自身の臨床実践についても書いてみたいと思います。私の場合、心理療法の仕事は多いとは言えず、多くの時間をある自治体で発達相談に従事しています。業務は発達検査の実施、保護者や教員へのコンサルテーション、親子教室への参与観察などが占めています。
こうした実践と精神分析的な臨床は無縁なのでしょうか?私は「解釈」もしませんし、転移を扱うようなことも決してしません。関わりは具体的な質問や提案などが占める割合がほとんどです。それでも支援やリソースについて相談するとき、親子教室の運営の傍ら、子どもの振る舞いを観察し、保護者がどんな思いで教室にいるのかを考え、話し合います。機関に呼び出されることへの不安、何らかの出来なさを暴かれるのではないかという怖さ、自分や子どもをそんな風にジャッジされることや排除されることへの怒りなど、私や組織が親子へと与えているプレッシャーについて考えます。「解釈」はしませんが、それを心に留めた上で、話し合いを維持していく、というのが近いかもしれません。
私の理解では、分析的実践のコアは対人関係で生じてくることを観察し、理解し、話し合おうと努めることです。分析的実践の経験は、耳を傾けること、時折生じる話し合いのタイミングを見つけることを、時折手助けしてくれているように感じられることがあります。

今回の企画が目指していること

こうした文脈のもとに、手短に今回の企画の意図をご紹介しておきます。
第1回は、平井正三氏に、「子どもと家族の心理臨床において精神分析的実践は何を目指すのか?」というタイトルで話していただきます。平井氏は別のところで、個人セラピーというより、家族での合同セッションを緩やかに維持していくケースも多いと話されていました。似たような経験のある方も多いのではないでしょうか。
第2回には、被災地支援をされてきた岩倉 拓氏、公認心理師の育成に携わっておられる橋本 貴裕氏を講師にお招きしました。臨床現場でどのように生き残っていくのか、リアルな話がお聞きになれるものと思います。
第3回では、小笠原 貴史氏を講師に、「子どもの生きた心の発達を支えるものとしての精神分析的心理療法」についてご講義いただきます。いわゆる「内省」のイメージを持っていると、サイコセラピーが発達促進的なものであるという考えは、きっと新鮮さをもたらすものでしょう。生き生きとした出会いについて論じていただく予定です。
第4回は、若佐 美奈子氏、竹山 陽子氏のお二人に、訓練経験についてお話しいただきます。お二人の女性から、訓練をどう生活や人生に組み込んでいくのか、ということを論じていただきます。ガッツリとした分析訓練でなかったとしても、お二人の話に喚起されるものがきっとあるものと思います。
長々とした前書きになりましたが、今年度も多くの方が来てくださることを願っています。ぜひ、奮ってご参加ください。

参考文献
Horne, A, & Lanyado ,M. (2009). Through Assesment to Consultation: Independent Psychoanalytic Approaches
with Children and Adoleschents. Routledge. (ホーン, A, ラニャード, M. 鵜飼 奈津子 (監訳) (2021).)子どもの精神分析的心理療法のアセスメントとコンサルテーション 誠信書房)

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