サポチル NPO法人 子どもの心理療法支援会

コラム

COLUMN

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子どもの心理療法についてーひとりの子どもとの出会いー

 今回は、子どもの心理療法について日頃考えていることを皆様にお話しさせていただきたいと思います。

 私が以前心理療法の場で出会った子どもは、活き活きとしたまなざしを私に向け、その年齢ならではの愛らしい雰囲気をもっていて、私はその子の存在自体にとても惹きつけられました。しかし、毎週の心理療法の場では、そうしたまなざしや雰囲気は影をひそめ、暴力的で冷酷なふるまいを表現しはじめました。遊びの中で表現されたこととはいえ、その子がどのような経験をしてきたのかを想像してとても動揺したことを覚えています。ふり返れば、心が始まるまだほんの最初の、やわらかく脆く傷つきやすい時期に、その子自身が受けた経験に深く関係していたのだろうと思います。またおそらく、その子と両親は互いに親しみや温かみのこもったまなざしを向け合った経験とともに、そうした良い関係をどうしても維持することのできない事情があったのだろうと思います。

 子どもの心理療法では、セラピストは子どものふるまいや表現に注意深く関心を向け、それを子どもがどのように経験しているのかを考えます。そして、子どもとセラピストの双方が、それぞれが見たことや考えたことを遊びや対話を通して共有していきます。その作業を通じて、その子ども自身が「自分が何を感じ、考えているのか」を知っていくことを手助けしていきます。冒頭に触れたその子どもは、自分にとって私が、自分に関心を向ける安全な相手だというだけでなく、自分の存在が相手の喜びとなっていることをあらためて知るようになっていきました。

 心理療法において、子どもとセラピストは1週間に1回のリズムで出会いと別れを繰り返し、子どもはセラピストに色々な思いを吐き出し、受け止められ、消化し、自分の体験としていきます。そうして、その子自身のやり方で、自分を含めて人を大事に思う気持ちや別れの耐えがたさを体験し、唯一無二の存在としてのひとりの人間になっていくことを手助けします。こうした体験が可能になるには、心理療法と並行して、養育者をはじめ子どもの周りにいる大人たちが力を合わせて、ひとりの子どものことを考え続ける作業があってこそだと実感しています。このようなワークに興味をもち、意義を共有させていただく機会を持てることに喜びと責任を感じながら、日々臨床の仕事をしています。

 目の前にいる子どもとの交流がとても困難な感じが続いていたり、人生におけるさまざまな事物や人との出会いを子どもが存分に体験できるようになっていくことに関心がおありでしたら、子どもの心理療法は社会の中にある一つの選択肢であると私は思っています。

 

          サポチル認定子どもの精神分析的心理療法士/臨床心理士 吉岡彩子

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