サポチル NPO法人 子どもの心理療法支援会

コラム

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『子どもの心理臨床の場を個人開業することをめぐるあれこれ』 Vol.4 想いを抱え一緒に考えていく場だからこそ、自分の想いも大事にするということ

 個人開業が臨床家としての自分の理念や信念をかたちにできる場だということ、だからこそ、外とのつながりの大切さを実感するということをこれまで綴ってきた。

 今回は、個人開業を自身の足場として、自分が大事にしている想いや、自分が提供できるものが何なのかということを誰かに届けるための呼びかけを行うことをめぐるあれやこれやについて綴ってみたい。

 それは自己主張や自己表現のための情報発信という面と、営業や宣伝など、いわゆる広報活動という面もある。営業・宣伝・広報活動というとビジネスライクな印象がし、拒絶感や苦手意識を抱く臨床家も多いかもしれない。実際に、私もそういう感覚を抱いていたように思う。

 しかし、大きな組織や公的機関ではないため、何もしなければ誰にも知られることのない個人開業の場では、知ってもらえなければ、何もできないまま終わってしまう危険がある。だから、知ってもらう必要があるし、何が提供可能なのか、そして、何を大切にしているのかという自分の想いを示していく必要があるというふうに考えるようになった。

 現代社会では、様々なSNSツールがたくさんあり、誰でも簡単に情報発信が可能である。しかし、情報社会であるがゆえに多くの情報が溢れかえっているという状況でもある。極端な話では「子どもの心理相談・カウンセリングを専門にしてます」だけでは何の宣伝にもならないわけである。単なる情報を発信するだけでは他の多くの情報に埋もれてしまうのだ。

 だからこそ、情報を発信するだけでなく、個人開業の場で何を大事にしているのかという想いを発信するということが重要なのだと思う。私が何を提供できるのかということに加えて、私が大事にしている想いを発信することが、他の誰かの想いを抱える可能性として届く機会を生じさせるのではないかと。

 そんなことを綴っていて、ふと自分自身の個人分析の経験を思い出す。私の分析家は常に自分という個についての問いと、自分という個と他人という個がどう関わっていくのかという関係性についての問いを突き付けてくる人だった。

「あなたは、あなたの自分事としての想いを語っていくことができるだろうか?」

「あなたは、あなたの想いを「この指とまれ!」と投げかけることができるだろうか?」

「あなたは、あなたのところに集まった多くの想いを抱えていくことを他人事としてではなく、自分事として一緒に考えていけるだろうか?」

 私の分析家から学んだことのひとつとして、相手の想いを抱えていくためには、それを抱えていけるだけの自分の想いが必要だということであり、想いのある器が想いを抱えていくためには必要だということである。

 そんな想いを抱きながら、私はホームページ内のブログ、X(旧Twitter)、Instagram、Facebook等で試行錯誤しながら情報発信している。今後の計画として、一般の親や家族向けにオンライン子育てセミナーを開催することにもチャレンジする予定である。子どもに向けたメッセージの発信についても検討中である。

 これらの試みが成功するか失敗するかは分からないが、そのひとつひとつの結果を踏まえながら試み続けていく過程にこそ価値があるように思っている(思うようにしている)。なぜかというと、自分の想いに基づいた行動は自らが学ぶための経験知(値)になるから。そして、それが自分と他者および社会とのつながりの中で、自分の想いの届け方と相手の想いの抱え方を学んでいくことにもなると思っているから。一喜一憂しながら情報発信していこうと思う。

 ユーザーである子どもや家族にこの場所を知ってもらうために。

 子どもの心を大切に育んでいくためのヒントを家族や親に届けるために。

 開業してからのあと数ヵ月で1年が経つ。そんな私の想いや声が届き始めたのか、私が営む個人開業の場にも少しずつ人が集まり、様々な人たちが様々な想いを抱えて相談に訪れ、それぞれの想いの受け皿として個人開業の場を利用している。

例えば、

  子ども自身が自分の心に触れていく場として

  子育てをめぐる親自身の心の揺れに向き合っていく場として

  親子間の心の触れ合い難さについて取り組む場として

  子どもと家族の心理支援に関わる同業者が自身の研鑽のための学びの場として

  子どもと保護者向けの新規事業の立ち上げに対する専門家の意見を求める場として

  学校の教職員向けの研修企画や講師依頼の場として

 自分の実践と訓練の経験に基づいた自分が提供可能な専門性と自分の想いを発信していくことで、何をどうしたらいいか分からずに迷子のような状態になっている子どもや家族にも、彼ら/彼女らを支援する方にも、私の想いが届くことがあるだろう。そして、それが何かしらの助けや励みになる可能性の機会を生み出すだろう。

 私にとっての個人開業の場は、相談に訪れる人たちの想いを一緒に抱え、考えていく場であり、自分の想いも大事にしていく場でもある。

 このコラムを読んでいる皆さんにも何かしら私の想いが届くようでしたら嬉しいです。皆さんがご自身の想いを私に届けたいと思うようでしたら、遠慮なくご連絡ください、お役に立てることがあるかもしれません。ご用のある方は是非。

(サポチル認定子どもの精神分析的心理療法士/

小笠原こどもとかぞくのカウンセリングルーム 小笠原貴史)

名称:小笠原こどもとかぞくのカウンセリングルーム

所在地:東京都渋谷区千駄ヶ谷5-17-1フェリーチェ千駄ヶ谷202

※小笠原こどもとかぞくのカウンセリングルームは、サポチルの委託機関ではありませんが、「子どもの精神分析的心理療法士」による専門的な精神分析的心理療法を受けることができます。今後、関東地方においても委託機関の認定が進むよう、セラピストの育成や支援のための寄付のお願いに尽力していきます。

寄付によって、心理療法を必要としている子どもたちへの支援が行えます

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