サポチル NPO法人 子どもの心理療法支援会

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こころの中の“優しさ”と“厳しさ”のバランス

普段は優しい人でも激しく怒ることがあったり、厳しい人がふとしたときに優しさを見せたりすることがあるように、人のこころの中には“優しくする部分”と“厳しくする部分”が両立しています。子育てにおいて、この2つの部分のバランスを取ってお子さんと関わることは決して簡単なことではないのですが、少しでもそのバランスを取ることができれば、お子さんのこころの安定を保つことにつながるでしょう。

まず、子育てにおける“優しくする部分”とは、お子さんの言い分や気持ちを受け止める部分にあたり、自分の気持ちを言葉にする能力や、安定したこころの状態の維持、自分に対する自信を育むことを促します。例えば、お子さんが泣いたり怒ったりしたときに、まずは話に耳を傾け、「それは悲しかったね」「○○だからすごく怒ってるんだね」と気持ちを理解することで、お子さんは“自分の気持ちをわかってもらえた”と安心し、落ち着きやすくなります。

一方で“厳しくする部分”は、お子さんから聞いた話の矛盾点や納得できない部分について、「でも、それはあなたにも悪いところがあったよね」と指摘したり、お子さんからの要求が過剰なときには制限(例:ゲームは一日1時間)を与える部分にあたります。言い換えると、客観的な視点から出来事を見て、お子さんに“正論”を伝えたり、反省を促したりする部分です。この部分は、お子さんの自立心や社会性、物事を客観的に見る力、責任感などを育むことを促します。

この2つのバランスをとった関わり方の例としては、お子さんの話を聞いて、「○○の部分はあなたが悪いと思う。けど、××の部分は確かにしんどかったし、腹も立つことだよね」と“実際の出来事”と“そのときに湧いた感情”を仕分けたり、何かルールや制限を設ける際は、親御さんが一方的に決めるのではなく、お子さんの意見も部分的に取り入れながら、両者が折り合える妥協点を話し合いによって探したりすることが挙げられます。

しかし、この2つのバランスが崩れて“優しくする部分”が強くなりすぎれば、お子さんはどんどんワガママに自分の要求を押し通すようになりますし、逆に“厳しくする部分”が強くなりすぎれば、お子さんが自分の言い分をわかってもらおうとさらに激しく自己主張して親子ゲンカが泥沼化したり、あるいは逆に自分の本音を表現することを控えたりするようになってしまいます。そのようなときには、お子さんから一旦距離を取って冷静になり、“厳しさ”と“優しさ”のバランスを取るように心がけてみることが助けとなるかもしれません。

…このような視点があれば、自分が今どちらのモードでお子さんと関わっているのかが客観的に見やすくなり、2 つの部分のバランスを取りやすくなるかもしれないですね。お子さんと関わる際の一つの補助線となれば幸いです。

 

(サポチル理事/臨床心理士:久永 航平)

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