サポチル NPO法人 子どもの心理療法支援会

コラム

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子どもの遊びについて

みなさんは通訳のお仕事をご存じでしょうか。日常生活の中で通訳者を見かける場面は、スポーツ選手や監督のインタビューの時などでしょうか。日本語を話す人と、英語を話す人の間に入り、日本語を英語に、英語を日本語にそれぞれ変えて、異なった言語をもつ人が互いにコミュニケーションできるようにするお仕事です。今回は、この言語間の通訳という作業が、実は、形は違えど大人と子どもとのコミュニケーションの中にも入っているかもしれないことを、子どもの遊びという視点からお話したいと思います。

幼児さんから小学校低学年くらいまでの、大人との会話ができなくはないけれども、まだ言葉の発達が十分ではない年齢の子どもたちは、どのように彼らの想いや考えを大人や友達に伝えようとしているのでしょうか。時に、「ちゃんと説明しなさい!」などと叱っても「だって…」と、もごもごしてしまう場面は、多くの保護者の皆さんが経験しているところではないでしょうか。このような子どもたちでも、「遊び」という形であれば、実に豊かに、思いや考えが含まれたこころの世界を表現することがあります。

では、遊びの中で子ども達がしていることは何でしょうか。

今回は、「象徴」という視点から考えてみたいと思います。そもそも、「象徴」とは何でしょうか。ここでは、すごく単純化して、「何かを何かに見立てる能力」としてみましょう。例えば、お外で「ごっこ遊び」をする時、実際のお札は使えないから、葉っぱを千円札に「見立て」て、買い物ごっこをする。この遊びに参加している子どもたちは「葉っぱ=千円札」という「見立て」を共有しているわけですね。もし一人でも「いや、それは葉っぱだし」と言い張ったら、文字通りお話しにならない、遊びにならなくなってしまいますよね。買い物ごっこでは、本物の千円札がなくても、他のモノ、つまり葉っぱでお札の代わりにすることができる、それによって、やり取りがどんどん広がっていきます。この葉っぱをお札に見立てることのできる力、これを「象徴」を使うことのできる力と言います。別の角度から見ると、この遊びに参加している子どもたちは、お友達が「葉っぱ=千円札」と「見立て」ていることも分かっていますよね。つまり、見立てを通して遊ぶことで、相手の立場に立って考えられるようになる思いやりも培われていく、とも言えそうです。

では、続いて、今度は感情の面から遊びや象徴について考えてみましょう。例えば、お母さんに叱られた子どもが、その後に恐ろしい怪獣を描いたとしましょう。この怪獣は何を「象徴」しているのでしょうか。ものすごい剣幕で怒っていた「怪獣みたいなお母さん」かもしれませんし、「ほんとは、僕だって理由があって、あんなことしちゃったんだけど、全然分かってもらえなかった。だからガーーー!」と、腹を立てている「怪獣のような僕の部分」かもしれません。

子どもの心理療法士の仕事の一部に、先ほど書いたように、子どもが表現する遊びから、彼らの気持ちや考えを理解し、時には、気持ちや考えを言葉にして伝え返していく作業があります。その繰り返しを通じて、子どもたちは、自分の考えや想いを「わかってもらえた」と体験します。そして、自分の中に色々な感情があることを知り、今度は自分がしてもらったように気持ちや考えを言葉で伝えられるようになります。この思いや考えを伝える言葉の働きが「象徴」と言われるものです。この象徴を使うことができることが、「こころの成長」と呼ばれるものひとつであるように思います。何もこれは心理療法士だけがしているわけではなく、日常の中で保護者の皆さんも子どもの遊びを理解して、言葉に通訳するという、子どものこころの「通訳者」という仕事もなさっているのかもしれませんね。

※通訳と心理療法については、チャリティ団体のJAMMINさんからインタビューを受けた際にもお話しているので、よろしければ、こちらのリンクもご覧ください。

虐待を受けた子どもや発達障害を抱える子どもの心の声を通訳、心理療法を通じて人生を切り拓く力をサポート〜NPO法人子どもの心理療法支援会(サポチル) | JAMMIN(ジャミン)

 

(サポチル理事/医学博士/臨床心理士:藤森 旭人)

       

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