サポチル NPO法人 子どもの心理療法支援会

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「こころの羽の伸ばし方」#6 レビュー記事:この漫画がすごい!「アオハライド」

咲坂伊緒は私が学生時代から好きな少女漫画家である。あるインタビューで彼女は「自分の一部を凝縮してそれぞれのキャラクターにしている」と話している。そのためかフィクションでファンタジーであるのに、キャラクターたちが今まさに生きている感じがするのが彼女の作品の良さだと私は思う。今回取り上げるのは、私が一番好きな作品「アオハライド」である。

 

ストーリーは、「主人公の双葉は中学時代、初恋相手だったが突然転校してしまった洸に高校で再び出会う」というもので、よくある少女漫画である。しかし、恋愛要素だけでなく登場人物たちの葛藤や成長も見どころである。ここでは、主人公の双葉と洸に着目したい。

双葉は中学時代に“ぶりっ子”とレッテルを貼られいじめられた経験から、高校では女子に嫌われないようにと、わざとがさつに振る舞う。洸はそんな双葉の在り方について、鋭くしかしどこか優しさを含んだかたちで指摘し、双葉は偽りの自分を演じることを辞めようと決意し行動を起こしていく。

一方の洸は、一見すると何の問題も抱えていないように見える人物である。しかし、徐々に双葉は“洸は本当には笑っていないのではないか”と思い始め、中学時代転校した後の洸に何があったのか知ろうとしていく。洸は親の離婚後、母と二人暮らしをしていたが、母を癌で亡くし強い罪悪感を抱え、周りや自分自身と一定の距離を置いて生活をしていたことが分かってくる。自分の心の中に踏み込んでくる双葉に洸はイラっとしながら、それでも双葉は洸の気持ちを考えやりとりを続け る。そんな中で洸ははっと「そうか俺は、何かに心が動いたり、心底笑ったり、毎日に意味を持ったりするのを許されたかったんだ」と気づき涙を流し、「本当はずっとこんな嵐みたいなものを待っていたのかもしれない」と気づく。

 

双葉も洸も見て見ぬふりをしていた自分の想いに気づき、成長を果たしていく。しかし、私や読者がこの作品に共感したり惹かれたりするのは、その気づきに至るまでの心の揺れ動きや葛藤の “生っぽさ”であったり、自分に注目し気持ちを考えてくれる他者の存在の尊さであったりするのではないかと思う。また、日常の中でふっと自分の中にも葛藤している双葉や洸のような気持ちや、 一方で自分に注目し励まし勇気づけてくれる双葉や洸のような気持ちに気づく、自分の中でまさに キャラクターたちが生きているように感じるそんな不思議な作品なのである。

 

出典:咲坂伊緒(2011–2015)『アオハライド』(全13巻)集英社.

 

本連載は、サポチルに関わる臨床家が、自身の本棚や臨床の背景にあるものを紹介するエッセイです。サポチルは、それぞれの個性と臨床観を持つ専門家一人一人によって成り立つ団体です。その顔ぶれそのものをお伝えしたく、いずれも無署名で掲載します。また、エッセイの多くは会員向け会報に掲載したものを、執筆者の了解を得て再掲載しています。掲載内容にお気づきの点がございましたらお問い合わせください。

 

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第1回:伝統芸能の革命児たち

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